カニへの愛
百科事典で調べものをする時、次の項目、また次の項目と、漫然と読み進んでしまうクセがあります。仕事が詰まっているときは呪わしく思えるこのクセも、種々雑多な知識が身に付くし、役に立つことがないわけではありません(と自らをなぐさめて)。
ある日、私は「饅頭(まんじゅう)」について調べていました。
人身御供のかわりに人の頭に似せて作ったことから饅頭は始まった、という饅頭誕生の伝説はご存じですか?
「蛮人の首をかたどったので<蛮頭>といい、それがなまって<饅頭>になったとされる」(平凡社『大百科事典』より)。
ひとしきり喜んで、次の項目です。次は「饅頭蟹(まんじゅうがに)」でした。
そこには「アカマンジュウガニ」やら「スベスベマンジュウガニ」やらという、嘘のような蟹が存在していることが記述されていました。
甲羅が丸く盛り上がっていることから「マンジュウガニ」という和名が付いたカニで、日本に生息しているそうです。
こうして得た知識のおかげか、蟹のお導きか。またまた調べもの中に新たな発見が!
「スベスベマンジュウガニ」の仲間の「マルミアカマンジュウガニ」と「スベスベフタバヒラベニオウギガニ」が見つかったという記事を発掘(1997年7月16日朝日新聞)。
「丸み赤饅頭蟹」と「すべすべ双葉平紅扇蟹」なんでした。
ところで、この「すべすべ」という命名に、蟹への愛を感じるのです。「つるつる」はプラスもマイナスもない言葉ですが、「すべすべ」は明らかにプラスの意味合いですよね?
すべすべしたお肌とか、すべすべのお餅とか。
さわると手にしっとりと馴染んで気持ち良い。蟹はたぶん、ただの「つるつる」だと思いますが、それを「すべすべ」としたのは、やっぱり愛でしょ。
なお、「スベスベマンジュウガニ」はフグ毒に近い物質を持っていて、食べると死ぬこともあるそうですから、見つけても食べてはなりませぬ。
Web版『おれいゆ通信』「茶饅頭」:加筆改稿。
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