中に足を踏み入れると、本物のカフェとすぐわかる。豆を選び少しずつ焙煎するコーヒーの美味と、奥の厨房から運ばれるケーキの満足度の高さ。何より、馴れた閉鎖感とは無縁の、風通しの良さが気持ちいい。 カフェについて「アンティーム(親密)でアノニム(匿名)、半ば閉ざされ、半ば開かれている」と海野弘は書いた。 そういう心地良さが、椏久里にはある。 マスターの市澤さん夫婦は、家業の農園に本腰を入れようと勤めを辞め、納得のいく野菜を顔の見える仕方で販売する場であり、さまざまな人たちが交流する所として、椏久里を92年にオープンした。 『MUTTS』2001年10月号「カフェ特集」より一部転載